そして翌日、お母さまから頼まれたクッキーを手に、王城へ向かう。

 もちろん、レオンハルトさまと一緒に。

 レオンハルトさまもなにか用意をしたようだ。

 王城につき、デイジーさまのもとへ急ぐ。

 デイジーさまは私たちに気付くと、ふわりと花が(ほころ)ぶような笑みを浮かべて、

「いらっしゃい」

 と、柔らかい言葉で迎えてくれた。

「先日は愚息の変なところをみせてしまって、ごめんなさいね」
「いえ、お気になさらず」

 慌てたように手を振るレオンハルトさま。

 レオンハルトさまは話題を変えようとしたのか、持っていたものをデイジーさまに差し出す。

「あの、良かったら。フォルクヴァルツで採れたブドウで作ったワインです」
「あら、ありがとう。いただくわ」
「デイジーさま、こちらもどうぞ。母からですわ」

 スパイスクッキーも差し出すと、デイジーさまは一瞬目を丸くして、それから「ふふ、ありがたくいただくわ」とワインとクッキーをメイドに渡した。

「――じゃあ、座りましょうか。話はそれから」
「はい」

 デイジーさまにうながされて、私とレオンハルトさまは指定された椅子に座る。

 王城の一室を、私たちとのお茶会のために貸し切ってくれたみたい。

 用意されたお茶やお茶菓子を眺めていると、執事がお茶を()れて私たちの前に置く。

「あなたたちは下がっていて」
「かしこまりました。ご用の際は声をおかけください」

 執事とメイドは素直にその場から去った。

 おそらく、扉の前でデイジーさまの護衛と一緒に待機しているだろう。