デイジーさまへお茶会のことを相談する手紙を出すと、それならすぐにしましょうと返事がきた。

 明日、レオンハルトさまと一緒に王城に向かう。

 そのことを伝えると、彼は「わかりました」とうなずいてくれた。

 急なことで本当に申し訳ない。

 でも、なにも言わずに私の考えを尊重してくれるその対応、とても好きだわ。

「エリカ、デイジーさまにお会いするのなら、渡したいものがあるんだけどぉ……」
「渡したいもの、ですか?」
「ええ。クッキーなんだけどねぇ、甘くないクッキーなのよぉ。きっとデイジーさまも気に入ると思うわぁ」

 にこにこと笑うお母さまに首をかしげる。

 甘くないクッキー?

 お母さまは「そうよぉ」と、どんなクッキーなのかを教えてくれた。

 スパイスをふんだんに練り込んだ生地で作っているようで、どちらかといえばおつまみ系らしい。

「ワインに合うのよぉ。デイジーさまはワインがお好きだから、いつかお渡ししたいと思っていたのよねぇ」

 ――確かに、デイジーさまはワインがお好きだ。

 ワインと名のつくものは、集めているらしい。

 子どもが生まれたときにも、その年のワインを買って、子どもが大きくなったら一緒に飲むのが夢だと語っていたことを思い出し、なんともいえない気持ちになる。

「わかりました。明日、お渡ししますね」
「お願いするわぁ」
「陛下には良いのかい?」
「デイジーさまと一緒に食べるでしょ、きっと」

 陛下に対してはそのクッキーを渡す予定はないみたい。

 お母さまはうきうきとした様子で、クッキーの手配を始めた。

 お父さまはそれを見て、小さく肩をすくめる。

 レオンハルトさまは「ワインか……」と小さくつぶやいていた。