「そうね、とても良いと思うわぁ。互いのことを想い合っていることが、わかるもの」

 にんまりと弧を描くお母さまの口元。お父さまが「とりあえず、食事にしようか」と椅子に座るよううながした。

 お父さまとお母さまは、レオンハルトさまにフォルクヴァルツがどういうところなのか(たず)ねる。

 私が知っているフォルクヴァルツは本で得た知識だから、レオンハルトさまの話はとても興味深かった。

 辺境地は戦争時に狙われやすいけれど、フォルクヴァルツの守りはどこよりも優れていて、堅実な戦法を(もち)いてあの地を守っているらしい。

 フォルクヴァルツには港もあるから、活気があり、美味しい魚料理が自慢とも。

「あらぁ、それは一度食べてみたいわねぇ」
「エリカの結婚式には訪れるから、そこで楽しむのはどうだろう?」
「良いわねぇ。そういえば、いつ向かうかは話し合ったのかしらぁ?」
「できるだけ早く、とは考えています」

 ちらりと私を見るレオンハルトさま。こくりとうなずくと、両親は「そう」と優しく微笑んだ。

「寂しくなるわねぇ。でも、エリカが幸せになれるなら、お母さま、嬉しいわぁ」

 お母さまは目元を細めて、私を見つめる。確かな愛情を感じ取って、なんだか急に胸が締め付けられたようにきゅっと痛くなる。

 エリカ・レームクールとして過ごしてきた十八年間。

 両親は私のことを、愛して支えてくれていた。

 その恩を、どうやって返せばいいのだろう?