それにしても、レオンハルトさまはどうして私に会いにきてくださったのかしら?

 目で問うように見つめていると、彼はお茶を一口飲んでから、口を開いた。

「あの、互いのことをもっと、知ってから……と考えていたのですが、エリカさえよければ、一緒にフォルクヴァルツに行きませんか?」
「……えっ?」

 変に高い声が出てしまった。だって、あまりにも意外で。

 フォルクヴァルツには行ってみたいと思っていた。彼の治める領地が、どんな感じなのか気になっていたし、王都に未練もないし。

「レームクール伯爵夫妻も賛成してくださっています。なので、本当にエリカがよければ、なのですが……準備が整い次第、フォルクヴァルツへ向かいたいと考えています。とはいえ、急な話なので……」

 こちらを(うかが)うように見つめるレオンハルトさま。もしかして、このことをお父さまと話していたの?

 私が彼の言葉を頭の中で繰り返していると、なにを思ったのかレオンハルトさまは眉を下げた。

「慣れ親しんだ土地から去るのです。それに、フォルクヴァルツはあなたが思うような場所ではないかもしれません」
「――大丈夫です」

 自分の声が、柔らかく響いた。彼を安心させるように微笑み、私はお茶を一口飲んで喉を(うるお)してから、じっと彼を見つめる。

「私は大丈夫です、レオンハルトさま。それに、あなたの治める領地を見てみたいですわ」

 カップを置いて、胸元に手を添えた。

 そっと目を伏せてから顔を上げて、真っ直ぐに彼の視線を受ける。

「エリカ……」