そうだったんだ、と思う気持ちと――それじゃあ、彼はどうして私との縁談を断らなかったのだろう? と首をかしげる。

「父から、友人の愛娘が婚約破棄をされたから、と釣書を渡されました。確認して、驚きましたよ。エリカだったので」
「……ですよね」

 愛娘、かぁ。なんだか、ちょっと照れくさい。

 それにしても、本当にこんな偶然ってあるのね。……お父さま、いつの間に私の釣書を送ってくれたのかしら?

「実際にお会いし、話してみて、余計にダニエル殿下がなぜあなたと婚約を破棄したのか、理解できませんでした」
「……ダニエル殿下には、アデーレ嬢がいますから」

 私じゃない人を選んだ。それだけの話……よね。

 ダニエル殿下はアデーレのことを……ヒロインのことを、本気で好きになったはずだから。

 実際聞いたことはないけれど、一年に一回だった浮気は学園にいるあいだはなかった。

 ――アデーレ一筋のように見えた。私が見た範囲だから、なんとも言えないけれど。