「ちょっと待ってちょうだい」

 そう声をかけてから、ノートを引き出しにしまい、鍵をかける。

 鍵をいつも入れている引き出しに入れてから、「どうぞ」と伝えると、ガチャリと扉が開いた。

「レオンハルトさま!」

 お父さまと話していたであろうレオンハルトさまが、私の部屋に……!?

 目を丸くしていると、くすりと微笑む姿が見えた。

 ハッとして、一度深呼吸をしてから、胸元に手を置く。

「すみません、お見苦しいところを……」
「そんなことはありませんよ。中に入っても?」
「もちろんですわ」

 部屋の中に招き入れて、メイドを呼ぶ。食事をする前だから、お茶だけお願いした。

 メイドはすぐにお茶を用意してくれた。一礼してから出ていく姿を見送り、お茶を一口飲んでから微笑みかける。

「――今日は本当にお疲れさまでした」
「レオンハルトさまも」

 緩やかに首を振るレオンハルトさま。彼はすぅっと目元を細めて、小さく眉を下げた。

「――父が、今の王家のことを心配していた理由が、理解できました」
「まぁ」

 思わず口元を指で覆ってしまう。

 でも、あの様子のダニエル殿下を見たら、そう思うのも無理はない。

 デイジーさまもいらっしゃるから、すぐにどうこうなるわけではないと信じたいところだけど。

「フォルクヴァルツは辺境地ですから、王家のことを知るのは時間がかかるのです。なので、こういう状況であることを知ったのは、恥ずかしながら王都についてからなのです」

 レオンハルトさまは肩をすくめながら教えてくれた。