自室に入り、家用のラフなドレスに着替える。

 レオンハルトさまと食事をするのだから、ラフなドレスといっても、ラフすぎないものを選んだ。バッチリメイクもナチュラルメイクへ。

 それから、考えたいことがあるから、とメイドたちを部屋から追い出して、転生者であることを思い出してから書いたノートを取り出す。

 前世の記憶を思い出したときに、頭の中を整理しようと書き連ねたもの。

 日本語で書いたから、この世界の人たちには読めないはずだ。

 でも、なんでそんな文字が書けるのかと怪しまれる可能性を考慮して、鍵のかかる引き出しの中に入れていたのよね。

 一人だけのときにこっそり見返して、乙女ゲームとの違いを確認していたの。

 ……学園に入学してから、見返すことは少なくなっていたのよね。

 なぜなら……学園生活が思いのほか楽しくて、アデーレとダニエル殿下に近付かないようにすればいいかなって考えちゃったからだ。

 ――なぜか、卒業パーティーでの婚約破棄イベントは発生したけど。

 まぁ、元々学園を卒業したら、お父さまたちに話して、婚約を白紙にしてもらおうとは思っていたけれどね。

 ダニエル殿下に想い人がいると話せば、きっと両親は私の味方になってくれると考えていたし。

「私がいないと発生しないイベント……」

 アデーレの言ったことを思い出しながら、つぶやく。

 手に取ったノートをパラパラと(めく)り、椅子に座って乙女ゲームの流れを思い出す……でも、あんまりはっきりとは思い出せないのよね。

 私が前世の記憶を思い出して、ノートに最初に書いた文章は『エリカ・レームクールの破滅を防ぐ』だった。

 ――破滅……。あ、そうよ、それだ!