オイゲン陛下と視線が(まじ)わる。そして、一度ゆっくりと深呼吸をしてから、厳しい表情を――ダニエル殿下たちに向けた。その表情に怯んだのか、ふたりはびくりと肩を震わせる。

 重々しいため息が、パーティー会場に響く。

 ……前世の記憶があるから、私は徹底的にアデーレと会わないようにした。

 乙女ゲームの『エリカ』はダニエル殿下と仲良くするアデーレに嫉妬し、その仲を切り裂くために彼女に忠告を繰り返す。

 それが『いじめ』だと断罪されるのが、今日の卒業パーティーだったわけだ。

 断罪された『エリカ』は国外追放されて、その後の消息は不明。

 一方、ダニエル殿下とアデーレは結婚してハッピーエンドというシナリオだったはず。

 そのシナリオは、もう崩れている。

 私、アデーレに忠告なんてしていないから。

 べたべたとくっつき、いちゃつくふたりの姿は学園内でもとても目立っていた。おかげで()けやすかったわ。これに関しては本当に助かった。

「ダニエル。エリカ嬢との婚約は、お前が望んだことだったろうに……」
「あ、あの頃は子どもだったのです!」

 ……え? 覚えていたの?

 そっちに驚いて、思わずダニエル殿下を凝視してしまった。バツが悪そうにうつむいてしまったけれど。