それはきっとアデーレが原作をプレイして、ダニエル殿下ルートをこの世界でなぞっていたからだと思います――なんて、さすがに言えないわ。

「イベントがどうのって言っていましたよね」
「……そうですわね」

 そんなことを口にしたアデーレを見る、デイジーさまの冷たい視線ったら!

 絶対零度ってこういうときに使うのかしら。思い出しただけでもぞくっとするの。

 そしてなにより、そんなデイジーさまでも美しいのがまた恐ろしい。

 美人が怒ると怖いってこういうことなのかしら。

 綺麗な顔で絶対零度の視線。

 それに動じないアデーレはある意味大物かもしれない。

「レオンハルトさま、家に戻ったらゆっくり休んでください」

 付き合わせてしまったし、きっと疲れさせてしまっただろう。

「では、お言葉に甘えます」

 彼は目を一度(またた)かせてはにかんだ。

 なにかむ姿もとても好み。この人自身が私のストライクゾーン過ぎるのよ……!

「今日も両親と一緒の食事になると思いますが……」
「賑やかで良いですね」

 お父さまとお母さまのことをそう言ってくれるって、なんだか嬉しい。

 屋敷について、レオンハルトさまのエスコートで馬車を降りる。

 両親が私たちに近付き、

「疲れたでしょう?」

 と、労わってくれた。

「お父さまとお母さまも、でしょう? 私たちのために怒ってくださって本当にありがとうございます」
「あらぁ、エリカったら。お母さまを泣かせないでちょうだいな」