帰りもレオンハルトさまと二人きりの馬車だった。

 お父さまとお母さまは、きっと馬車の中でもくっついていることでしょう……

「……王族の方にお会いするのは久しぶりでした」

 レオンハルトさまが口を開き、ぽつりと言葉をこぼす。

「感想をお聞きしても?」
「……ダニエル殿下って、あんな感じでしたっけ……?」

 今日のダニエル殿下の様子を見て、以前とは違うように感じたみたいね。

「数回、話したことはあるのですが……そのときは結構しっかりしている人だと感じたんですよね」
「ちなみに、その数回、とは何年前でしょうか?」
「五、六年ほど前ですね」

 学園に入学する前だ。まだ十代前半の頃。

「学園では、ずっとあんな感じでしたわ」

 ――学園生活を思い出して、思わず視線を下げる。

 アデーレと一緒にいる彼は、とても幸せそうだった。

 ヒロインと一緒にいるのだもの、当然よね、と遠くから眺めていた頃が懐かしい。

 それにしても、アデーレも転生者だったなんて……

 正直ちょっと疑ってはいた。いたけれど……なんだか複雑な心情だわ。

「あの、レオンハルトさま。アデーレさまのことは、どう思いまして?」
「アデーレ・ボルク男爵令嬢のことですか? そうですね……」

 彼は考えるように視線を巡らせてから、私のことをじっと見つめた。

「不思議な人だな、と思いました」
「不思議?」
「ええ。自分が王妃になることを確信しているような態度でしたし、なにを根拠に? と」