にこり、と微笑み合う私たち。
この世界のヒロインであるアデーレ・ボルク男爵令嬢は、ぎゅっとダニエル殿下の腕に抱きついて、豊満な胸を押し当てている。
その感触に一瞬デレッと表情を崩すダニエル殿下に気付かれないよう、ため息を吐いた。
ダニエル殿下は、アデーレを愛しそうに見てから、わたしを睨むように見つめる。
笑みを浮かべて見せると、少し怯んだようだ。
でも、わかる。
――私はこれから、婚約破棄を告げられるのだろう。
別に構わない。婚約者であるダニエル殿下を、愛しているわけではなかったから。
彼の隣に立つための努力が、なかったことにされるのはもちろん悔しいが、与えられた知識や王子の妃となるために必要とされた立ち振る舞い方などは、ある意味私の財産とも言えるだろう。
ダニエル殿下は私のことをじっと見て――それから、ゆっくりと口を開き、会場内に響くような大きな声を出して、
「エリカ、きみとの婚約破棄を宣言する」
と、言った。
それまでざわついていた学生たちが、一気にしんと静まり返る。まぁ、そうなるわよね。
この国の第一王子であるダニエル殿下が、婚約者である私に、こんな場所で婚約破棄を宣言したのだから。
ちらりとアデーレに視線を向けてから、ダニエル殿下に視線を移し、すっとカーテシーをした。
「かしこまりました、お幸せに!」
満面の笑みを浮かべて祝福の言葉をかけると、ふたりは目を大きく見開く。
「……え、なんでそんなに乗り気ナンデスカ……?」
この世界のヒロインであるアデーレ・ボルク男爵令嬢は、ぎゅっとダニエル殿下の腕に抱きついて、豊満な胸を押し当てている。
その感触に一瞬デレッと表情を崩すダニエル殿下に気付かれないよう、ため息を吐いた。
ダニエル殿下は、アデーレを愛しそうに見てから、わたしを睨むように見つめる。
笑みを浮かべて見せると、少し怯んだようだ。
でも、わかる。
――私はこれから、婚約破棄を告げられるのだろう。
別に構わない。婚約者であるダニエル殿下を、愛しているわけではなかったから。
彼の隣に立つための努力が、なかったことにされるのはもちろん悔しいが、与えられた知識や王子の妃となるために必要とされた立ち振る舞い方などは、ある意味私の財産とも言えるだろう。
ダニエル殿下は私のことをじっと見て――それから、ゆっくりと口を開き、会場内に響くような大きな声を出して、
「エリカ、きみとの婚約破棄を宣言する」
と、言った。
それまでざわついていた学生たちが、一気にしんと静まり返る。まぁ、そうなるわよね。
この国の第一王子であるダニエル殿下が、婚約者である私に、こんな場所で婚約破棄を宣言したのだから。
ちらりとアデーレに視線を向けてから、ダニエル殿下に視線を移し、すっとカーテシーをした。
「かしこまりました、お幸せに!」
満面の笑みを浮かべて祝福の言葉をかけると、ふたりは目を大きく見開く。
「……え、なんでそんなに乗り気ナンデスカ……?」