「レオンハルトさま」
「はい、エリカ」
「――私たち、一歩ずつ夫婦になっていきましょう?」

 だってこれが――きっと、私たちの『初恋』だから。

 その恋心を大切にしたい。

 そう思って言葉を紡ぐと、レオンハルトさまは目を見開いて、それから柔らかく微笑んだ。

「そうですね、一歩ずつ。ともに支え合って生きていきましょう」

 ――ああ、やっぱり私、好きなんだわ。レオンハルトさまのことが。

 教会から出て、再びフォルクヴァルツに向かうため、馬車に乗り込む。

 レオンハルトさまと視線が合って、互いににこりと笑みを浮かべた。

 きっと大丈夫。レオンハルトさまと一緒なら、私は私の物語を歩んでいける気がするわ。

 ううん、私だけの物語じゃない。レオンハルトさまも一緒の物語。

 フォルクヴァルツについて――いって、きっとたどりつく前から始まっているの。

 私たちの物語が、きっともう、始まっている。

「――レオンハルトさま」
「はい」
「あなたに出逢えて、恋を知りました。――私を選んでくださって、ありがとうございます」

 胸元に手を置いて、レオンハルトさまに伝えたいことを口にすると、彼は一瞬目を(またた)かせてから、言葉を発した。

「オレのほうこそ、ありがとうございます。人を好きになることが、こんなにも幸せを感じると教えてくれたのは、エリカです」

 ふわりとはにかむ姿も可愛く見えて、恋は盲目とはこういうことなのかしら……? なんて考えた。だって、本当に可愛らしいのだもの。

 これから先、どんなことがあってもレオンハルトさまを愛し続ける自信がある。

 新しい生活については、不安よりも期待のほうが勝っていた。