「予行練習を、しませんか?」
「……えっ?」

 予行練習、とは……? と目を(またた)かせると、レオンハルトさまは悪戯(いたずら)っぽく笑い、そっと手を伸ばして私の頬に触れる。

 こ、これは、まさかの……?

 結婚式の予行練習ということ!?

 どんどんと顔に熱が集まっていくのがわかる。どうしよう、今の私、いったいどんな表情をしているのかさっぱりわからない!

「いやですか?」
「い、いいえっ、いやなわけがありません!」

 食い気味に否定すると、レオンハルトさまが目元を細めた。

 その瞳が『愛しさ』を隠していなくて、トクンと胸がときめく。

「――わたし、レオンハルト・フォルクヴァルツは、生涯エリカ・レームクールを愛し、守り抜くことを誓います」

 そんな瞳で、そんな甘い声で、誓いの言葉を口にするレオンハルトさまに、私の心が震えた。

 ――愛されていることを、実感する。

「――私、エリカ・レームクールは生涯レオンハルト・フォルクヴァルツを愛し、どんなときも寄り添うことを、誓います」

 ――ああ、どうしよう。予行練習なのに、涙声になっているわ。

 これが本当の結婚式だったら、感極まって言葉にならないんじゃないかしら?

 そんなことを考えていると、レオンハルトさまの顔が近付いてくる。

 顔を上げて目を閉じると、ふにっと柔らかい感触が。

 一瞬で離れてしまうその感触に、ほんの少しの寂しさを覚えたのと同時に、それが無性に恥ずかしくなる。

 私は乙女か! と。……いや、乙女であることに間違いはないんだけど……!