どの浮気相手とも違う顔をしていた。

 ああ、本気で好きなんだと(はた)から見ていてわかるくらい、彼女のことを愛しそうに見ていたのよね。

 考え込んでいると、レオンハルトさまが眉を下げて私のことを見ていたことに気付き、首をかしげる。

「あまり、面白い話ではないでしょう?」
「気遣っていただき、ありがとうございます。ですが、私は平気ですわ。思うことがないわけではありませんが、私にはレオンハルトさまがいますもの」

 そう、思うことがないわけではない。

 彼の婚約者になってから積み重ねた不満も多々あるが、プラスになったことも多々あるからね。

 マナーや教養を、真剣に学べたことはプラスだと思う。

 それに――やっぱり一番は、レオンハルトさまに出逢えたことが一番良いことだと感じているのよ。

 恋愛結婚なんて夢のまた夢と思っていた私に、『恋』を教えてくれた人。

「私は、レオンハルトさまをお慕いしておりますから、あなた以外を望みませんわ」

 にっこりと微笑んでみせると、レオンハルトさまの顔が真っ赤に染まった。

 耳まで赤いのを見て、可愛いなって感じちゃう!

「エリカにそう想っていただけて、光栄です」

 照れたように目を伏せるレオンハルトさまに、やっぱりこの人のことが好きだなぁと、しみじみ思った。