アデーレは一貫して、『(エリカ)』を見ていなかったということなのか、それとも、憎しみのフィルター越しに見ていたから、こんなことになったのか。

 ……理解したいとも思わないから、解答は要らないわね。

「そして、ダニエル殿下のプレゼントの中には、……宝物庫のものがあったようで。それを見逃すことはできない、とこんな騒ぎに」
「……宝物庫のものまで……!?」

 宝物庫って、いろんな国からいただいたものやら、献上されたものやらで溢れていたはず。

 ダニエル殿下が自慢げに話していたことを覚えている。

 自分が国王になれば好きに使っていいのだから、あれは自分のものなのだ、と。

 そして、あの宝物庫にあるものって、(いわ)く付きのものも多いから気をつけないといけない、とデイジーさまから聞いたことがある。

 ……もしかして、その曰く付きのなにかに、本当に()りつかれていたのでは……?

「どう決断されるかは国王陛下と王妃殿下にお任せになりますが……エリカが望むのなら、どんな処罰にするのか伝えますよ?」
「陛下たちにお任せしますわ」

 ダニエル殿下はアデーレに心底惚れていたのかもしれないけれど、今回のことでどう思うのかしら……? アデーレと一緒にいるときのダニエル殿下の顔を思い出して、ゆっくりと息を吐く。