「ルートを選んでいただいたのは、アデーレ・ボルク男爵令嬢が姿を見せる可能性を、少し高めたかったからです」
「……それはなぜなのか、聞く権利が私にはありますわよね?」
「ええ、もちろん。――実は、陛下にこう言われていたんです。あなたに危害を加えようとするのなら、容赦しなくてもよい、と」

 思わず息を()んだ。どういうことなのかをうながすように見つめると、彼はそっと私の頬を撫でてから言葉を紡ぐ。

「騎士が彼女に買収されていたらしく、塔から抜け出して隠れていたらしいですよ。彼女がいるように見せかけるために、背格好の似たメイドも買収して」

 買収……?

 ボルク男爵家にそんなお金があったのかしら? 怪訝(けげん)そうな表情を浮かべる私に、レオンハルトさまは頬をかく。

「オレたち――というか、エリカのことを憎んでいたようだから、ここできちんと決別するべきだと考えました。あなたの安全のためにも」
「レオンハルトさま……」
「来なければ、それはそれで良かったのですが……。来てしまいましたからね、彼女。しかも、ダニエル殿下からのプレゼントを使っていたようです」
「……え」

 ――もしかして、アデーレはダニエル殿下ルートに入ったことに安心して暴走した……?

 でも、いくらゲームの『エリカ・レームクール』が嫌いだったからって、こんな騒ぎを起こす?

 憎しみで周りが見えなくなったのかしら?