馬車の中は静かになった。ただ、私の鼓動の音が大きく聞こえて、レオンハルトさまにも伝わるんじゃないかって彼が近くにいるといつも思ってしまう。

「――エリカ」
「は、はい」
「窓を開けてもよろしいですか?」

 窓? と思いながらもこくりとうなずく。

 レオンハルトさまが窓を開けると、鳥が入ってきた。

 鳥の足に(くく)りつけられた紙を取ると、窓から出ていく。

 驚いて目を丸くしていると、レオンハルトさまは紙を広げて目を通した。

「アデーレ・ボルク男爵令嬢、今度は牢屋に入れられたようです」
「えっ?」

 もう? 目を(またた)かせてから、レオンハルトさまを見つめる。

 だって、ついさっきだったじゃない? って……。私がなにを考えていたのか、彼に伝わったようで窓を閉めてから肩をすくめた。

「城の騎士たちが都合よくいたなぁ、と思ったでしょう?」
「……それは……ええ、思いました」

 私たちが会話を終えた途端に姿を現したもの。

 誰かが城に報せてくれたのかなって考えていたのだけど、どうやら違うみたい?

「実は、あのルートを通ることは、陛下たちに知らせていたのです。陛下たち、念のために騎士たちを配置してくだったようです。愛されていますね、エリカ」

 にこりと微笑むレオンハルトさまに、私の鼓動が跳ねる。

 ――陛下たちが、この道を通ることを知っていた……?