男爵家の令嬢が王族に嫁ぐって夢があるけれどね。

 アデーレはあの不思議な力にも目覚めていないようだったから、王族が彼女のことを大切にするかどうかは、彼女自身にかかっているだろう。

 確か、ゲームではあの不思議な力が唯一無二の力だったから、アデーレはとても重宝されていたはずだ。

「そうねぇ……とりあず、お城からは出されるでしょうねぇ」
「領主になるんじゃないかな? 村や町の」

 ダニエル殿下への評価が低いな、うちの両親。

 心底嫌っていることがわかる。

 今までそんな素振りを見せなかったのは、気遣ってくれていたんだろうな、と眉を八の字にした。

「国王になる選択肢からは外れそうですね。……まぁ、なったら子どもには困らなそうですが」

 さりげなく側室を持つんじゃないかって言っているよね、レオンハルトさま。

 否定はもちろんしないけれど。

 アデーレだけで満足するのなら、それもそれで愛の力は偉大ねって言えるけれど。
……なんだか虚しくなってきた。

 私が王族の婚約者として背伸びしていた頃、ダニエル殿下は羽を伸ばしていたからねぇ。

「――まぁ、彼らのことはもう良いのです」

 パンっと両手を叩いて微笑みを浮かべると、みんなこちらに視線を集中させた。

「私は、『王族の婚約者』だったことに未練はありませんし、レオンハルトさまと出逢えたことで『恋心』を知りました。ダニエル殿下たちがどのような結果になろうとも、私には関係ありません。そうでしょう?」

 三人は目を見開き、それからふっと表情を緩めて大きく首を動かす。