「朝食を食べ終えて、すぐに向かうのかい?」
「その予定です」
「……寂しくなるわぁ。お手紙、たくさん書いてちょうだいねぇ。お母さまもたくさん書くから」
「もちろんです、お母さま」
「たまには、お父さまにも出してくれよ?」
「ふふ、お父さまにも書きますわ」

 私たちの様子を、レオンハルトさまが微笑ましそうに眺めていた。

 今日の朝食は、朝から豪華だった。料理長が張り切って作ってくれたみたい。

「ところで、二人だけで行くのぉ?」
「護衛は必要ないのかい?」

 レオンハルトさまに視線を集中させる両輪。彼はその視線を受けて、「途中で合流する予定です」と答えた。

 途中で? そういえば、レオンハルトさまの護衛はいつの間にかレームクール邸から姿を消していたわね。どこに行っていたのかしら?

「王都から出たあとに合流する予定です。彼らには、ちょっと調べものに協力してもらっているので」
「調べもの、ですか?」

 首をかしげて(たず)ねると、レオンハルトさまはこくりとうなずいた。

 そして、言おうかどうか迷っているように視線を彷徨わせてから、私を見つめる。

「エリカ嬢が、アデーレ嬢のことを気にしているようだったので……」

 もしかして、アデーレのことを調べてもらっていたの!? と、思わず目を丸くしてしまった。

「あの子、まだ塔にいるはずよぉ?」
「ええ。ですが、念のため。邪魔されたくありませんし」

 レオンハルトさまの言葉に、頬がじわじわと熱くなる。

 お母さまは「まぁ」と目を輝かせ、お父さまはなにかを考えるように口元に手を置いた。