「……きれいですね」
「それがエリカのお守りになることを、願っているよ」
「大切にします、お父さま」

 鞘に戻しカーテシーをすると、お父さまは「明日、行くのだろう?」と聞いてきた。

 小さくうなずくと、ぽんっと私の頭に手を乗せて、くしゃりと撫でる。

「――エリカ、なにかあったらお父さまたちを頼りなさい。でも、一番に頼るのは、レオンハルトくんにするんだよ。男は惚れた相手に頼られると、張り切っちゃうからね」

 悪戯(いたずら)っぽく笑うお父さまに、私はくすくすと笑う。

 そうね、なにかあったらまず、レオンハルトさまに相談しよう。

「わかりました」

 お父さまは部屋まで私を送ってくれた。

 明日はフォルクヴァルツへ出発する予定だから、早めに休まないと。

 この懐剣は手にしていたほうが良いのよね、きっと。

 ――両親からのプレゼントに、心が温かくなった。

 明日はフォルクヴァルツに向かうから、しっかり休まないと。

 ――このまま、なにも起こりませんようにと祈りながら目を閉じる。

 ゆっくりと戻るコースだから、きっといろいろな話ができるだろう。

 ……私、ゲームをやり込んでいたけれど、レームクールの風習、知らなかったわ。

 この世界のこと――全然知らないのだわ、と眠りに落ちるまで考えていた。