後頭部に手を置いて、照れたようにはにかむ姿に胸が高鳴る。

 いやもう、ほんっとうにこういう表情好き!

 そして私の気持ちが変わるかもしれないと思って、急いできてくれたことを知り、さらに胸がきゅんっとしちゃう!

「……では、ゆっくりのルートでもよろしいですか?」
「はい。オレもそちらのほうが良いと思います。急ぎのルートは女性には結構きついルートだと思うので」

 あ、一人称が『オレ』になっている。

 素を見ているようでなんだかこう……嬉しい、が近いかな。そんな気持ちになった。

「そんなルートを走ってきてくださったのですね」
「……はい」

 レオンハルトさまの朱が、私にも移ったように思う。だって、顔が赤くなっている気がするもの。

「……綺麗なブローチですね」
「もしも、私たちの子が女の子なら、このブローチはその子に受け継がれます、ね……」

 言っている途中で私たちは顔を真っ赤に染めた。互いに顔を隠すように、手で覆う。

 だって、想像してしまったんだもの。

 ――私とレオンハルトさまの子どものことを――……

 なんて言葉を紡げばいいのかわからず、黙ったままでいるとレオンハルトさまがこほんと咳払いをして口を開く。

「それでは、急ですが明日、出発しましょう」
「はい、お願いいたします」

 ――ついに明日、フォルクヴァルツに向かうのね。