レオンハルトさまにも予定というものがあるだろうから、彼の予定が良いときに向かえればいいな、とは思っていたのだけど……まさか、すぐに出発するとは思わなかった。

 鍛冶屋からレームクール邸に戻ったレオンハルトさま。

 武具を見て満足したのか、その表情はとても明るかった。

 そんな彼に、荷造りを終えたことを告げると、目を丸くして私をじっと見つめ、

「荷造りが終わったのですか?」

 と、問いかける。……昨日の今日で終わるとは、普通思わないわよね。

「……はい」
「では、フォルクヴァルツには明日向かいましょうか? エリカさえよければ……」

 さらっと言われて、私は目を瞬かせた。

 レオンハルトさま、いつでもフォルクヴァルツに向かえるように用意していたのかしら?

「フォルクヴァルツは父と側近に丸投げしているので、大丈夫だとは思いますが……どのくらいの仕事を残されているのかは、戻ってみないとわからないので」

 眉を下げて微笑み、右手の人差し指で自身の頬をかく姿を眺めながら、書類を確認しているお父さまを思い浮かべ、小さく微笑んだ。

「レオンハルトさま。領地につきましたら、家のことは私にお任せください」

 すっと自分の胸元に手を置いて、彼を見つめる。

 家のことをするのは、妻の役目。

 レオンハルトさまはじっと私を見つめて、その言葉の意味に気付いてかぁっと顔を赤くさせた。