自室に向かい、メイドたちとお母さまに手伝ってもらって、昨日の続きを始める。

 私の胸元につけられたブローチを見たメイドたちが、ほんの少し寂しそうな表情を浮かべた。

「エリカがここから離れちゃうのが、寂しいのよねぇ」
「はい、奥さま」

 お母さまの言葉に、同意するようにうなずくメイドたち。

 また目頭が熱くなる。

 それを誤魔化すように荷造りに集中していたから、思っていた以上に早く荷造りが終わってしまった。

 レオンハルトさまに三日あれば、と言ったのに、予想以上の早さで終わってしまったわ……

 お母さまの「あとで必要になったら、手紙をちょうだい」という言葉のおかげでもある。

「エリカはお母さまたちの子なんだから、いつでも頼ってちょうだいねぇ」

 ふわりと微笑むお母さまに、私は元気よく「はい!」と返事をした。

 離れていても、私は『レームクール』の娘なのだと、伝えてくれているのだろう。

「すぐに向かうのぉ?」
「そうしたいのはやまやまですが……もう一度、陛下たちにお会いしてからのほうが良いでしょうか?」
「うーん、エリカはもうあの人の婚約者じゃないし、大丈夫だと思うけどぉ……?」

 名前も呼びたくないのですね、お母さま。しかも、そんなに顔をしかめて。

「結婚式には呼んでちょうだいねぇ」
「もちろん、呼びます。お母さまたちに、見てもらいたいもの」

 私が幸せになるところを。

 だってそれがきっと、最高の恩返しになると思うの。

 レオンハルトさまとの結婚式を想像して、思わず顔が赤くなる。

 そんな私の様子を、みんな見守っていた。