使用人たちもいるし、屋敷内に一人でも大丈夫なんだけどなぁと思いつつ、私のことを思って言ってくれているのだろうなぁ。

 本当、優しい人だ。

「お気遣いありがとう存じます。レオンハルトさま」
「さて、なんのことでしょう?」

 私の言葉に、彼はそう返した。その口調はとても軽くて、私がなにに感謝しているのか理解したうえで、気にしないようにしてくれているみたい。

 ……ダメね、一度好きだと自覚すると、どんどんと深みにはまっていく。

 レオンハルトさまと出逢って、恋を知った。

 そしてこれから、その恋を愛に変えていく。

 二人で想い合っていけたら、きっと良い夫婦関係を築き上げられる――そう遠くない未来を創造して、小さく笑みを浮かべた。

 両親が帰ってきてから、レオンハルトさまは出掛けていった。それを見送り、荷造りの続きを始めようとすると、お母さまに声をかけられる。

「エリカ、ちょっとこっちに」

 手招かれて近付いたら、がしっと手首を掴まれた。そのままスタスタと歩き出す。

 お母さまの部屋に入り、ぱたんと扉を閉めると、掴んでいた手を離し、戸棚から小さな箱を取り出した。

「お母さま、これは?」
「お母さまの家に代々伝わる、アクセサリーなの」

 お母さまの声は弾んでいて、首をかしげる。

 そういう話を聞いたことがなかったから、興味がわいた。