食事を終えて、今日はこれからどうするのかを聞かれたので、荷造りをすることを伝えた。

 本当はメイドたちに全部任せれば、あっという間に終わるのかもしれないけれど、嫁ぐための準備だもの。

 できる限り、私自身が選びたい。

 ……ダニエル殿下からいただいたものは、デイジーさま経由で返そうかしら、とも考えている。

 あの宝石たちを受け取るのは私ではなく、アデーレだろう。

 アデーレが()らないというのならば、宝石なのだし他の使い道はあると思う。

「では、わたしは少し出掛けてもよろしいでしょうか?」
「どちらに向かわれるのですか?」
「ちょっと鍛冶屋に。どんなものが置いてあるのか、気になっていて」
「フォルクヴァルツと同じようなものかもしれませんが……」
「趣味の一つなんです。剣や鎧を見るの」

 照れたように微笑むレオンハルトさまは、まるで少年のようだった。

 剣や鎧を見るのが趣味……むしろ、国境を守るフォルクヴァルツ辺境伯だからこそ、より良い質の武具を探しているのでは? と考えてしまう。

「ゆっくり見てきてくださいませ」
「ありがとうございます。エリカは、屋敷から出ないのですよね?」
「ええ」
「では、レームクール伯爵夫妻が戻られたら、向かいます」