なんて考えながら、レオンハルトさまの手を取る。

「……はい、ぜひ」

 私の言葉に、彼がうなずく。

 手を繋いで中庭を歩く。それだけで、どうしてこんなに満たされた気持ちになるのだろう。

 鼓動が早鐘を打つのを感じながら、こんなに大きな音、レオンハルトさまには伝わるんじゃないかって、少し恥ずかしくなった。

 レオンハルトさまを見上げると、なにかを考えるように黙っていて、その表情も格好良いなぁなんて思ってしまう。

 満月だからか、彼の顔はハッキリと見えたしね。

 アーチになっている部分を抜けて、足を止めるレオンハルトさま。

 私も足を止める。

「見事な月ですね」
「本当に。とても大きくて綺麗ですわ」

 ――月が綺麗ですね、なんて、きっと日本人にはわかるけれど、この世界では通用しない愛の言葉を口にしてみた。

 レオンハルトさまはぎゅっと私の手を握ってくれた。

 その手が少し冷たい気がする。

 互いに惹かれ合うように顔を向け、段々と距離が短くなって――

 あとちょっとで唇が重なる――というところで、我に返ったのかレオンハルトさまが顔をばっと遠ざけてしまった。

 そのことに驚いて目を丸くしてしまう。

 今の流れ、キスをする流れだったよね!?

「れ、レオンハルトさま……?」
「その、すみません。許可も得ていないのに、淑女(レディ)に口付けをしようとするなんて……」