両親が明日まで帰らない――ということで、私とレオンハルトさまだけで食事を()り、当たり(さわ)りのないことを話して、解散。

 荷造りの続きをしたり、お風呂に入ったりしたら、あっという間に深夜に近い時間になり、慌てたようにベッドに潜り込んで目を閉じた。

 が、まったく眠れない。

 いつもなら睡魔が襲ってくるのに。

 このままでは寝付けないわね、と起き上がり、クローゼットから上着を取り出してちょっと散歩に行きましょう、と部屋から出る。

 外の空気を吸いたくなって、中庭まで歩いた。

 ちょっと暗いけれど、ううん、暗いから?

 昼間よりも濃厚な花の香りが鼻腔をくすぐる。

「甘い香り……」

 ぽつり、と小さく言葉をつぶやく。花に近付いて香りを堪能していると、足音が聞こえた。

 こんな時間に誰かしら? と振り返ると――……

「……エリカ」
「レオンハルトさま?」

 レオンハルトさまがラフな格好で立っていた。

 目を丸くして、驚いているように見える。

「こんな時間にどうしたのですか?」
「それは、オレのセリフです。一人で歩いているのが見えて、追いかけてきました」
「そうだったのですね。すみません、なんだか寝付けなくて」

 頬に手を添えて眉を下げる。レオンハルトさまは首を左右に振って、そっと手を差し出した。

「でしたら、このまま真夜中の逢瀬(おうせ)を楽しみませんか?」

 きょとん、としてしまった。

 真夜中の逢瀬……なんて甘美な響きなのかしら?