「……私、そんなにわかりやすい?」
「……実をいうと、ダニエル殿下と婚約していたときはそう思いませんでした。ですが、フォルクヴァルツ辺境伯とお見合いしてからのお嬢さまは、年相応に見えますわ」

 両手の隙間から彼女たちを見ると、はにかんでいた。なんだか嬉しそうだ。

「年相応に見えるのが、嬉しいの?」
「お嬢さまはいつも、背伸びをしているように見えましたから。年相応の振る舞いができる方と巡り会えたことを、嬉しく思っているのです」

 優しい言葉は、そっと私の心に沁み込んで、(たま)らなくなる。

「私、あなたたちのことが大好きだわ……」
「あら、嬉しいですわ。私たちも、お嬢さまのことが大好きですよ」

 ねえ? と同意を求めるように周りのメイドを見渡すのは、一番付き合いの長いメイドだ。

 部屋にいるメイドたちも、うんうんとうなずいている。

 愛されているなぁ、私。その事実が、なんだかくすぐったい。

「だからこそ、お嬢さまには幸せになってもらいたいのです」
「――ありがとう。そこは絶対、大丈夫な気がするわ」

 だって、好きな人と結婚するのだもの。

 これを幸せじゃないとは言えないでしょう。

 私の幸せを願ってくれる彼女たちに、感謝の気持ちでいっぱいだわ。

 彼女たちはレームクール家と契約しているメイドたちだから、私と一緒にフォルクヴァルツに向かうことはないだろう。