「さぁ、冷めないうちに早く食べよう。」
コンシェルジュが持って来てくれた温かいリゾットと、コンソメスープを2人で手を合わせて食べる。

しばらく夢中で食べていた由亜だったが、お腹もいっぱいになったのか、段々と電池が切れたかのようにスプーンを持ったまま、コクコクと頭が揺れ動く。

子供かっ!と突っ込みたいところだが、今日は無理もない、大変な1日だった筈だ。

由亜がかろうじて持っているスプーンをそっと取り、抱き上げ寝室のベットへと運ぶ。

しばらく可愛い寝顔を堪能して、極上のひと時を過ごした。

こんなにも純粋で心の綺麗な由亜を傷付け、いい様に操っていた京香に無性に腹が立つ。

もう2度と由亜を傷付けられないように、俺が一生守り続ける。そう彼女の額に思いを込めて口付けを落とす。

寝室を出て、善は急げだと京香に電話をかける。

『もしもし、翔魔?
貴方から連絡が来るなんて2度とないと思ってたわ。由亜と連絡が取れなくて困ってるんじゃない?』
ふふふっと意味ありげに笑い声が聞こえて来る。

由亜がまさか俺の元にいるなんて、思ってもいないだろう口振りが滑稽に思い、俺も思わず笑ってしまう。

「由亜は自分のところにいます。もう2度とそちらに帰る事はないでしょう。ただ、これだけは言わせてもらおうと思って連絡をさせて頂きました。

今まで由亜にしてきた数々、恐喝に拉致監禁全て犯罪ですから。由亜が警察に訴えると言うなら自分は協力するつもりです。
ただ、貴女をそこまで追い込んだのは、自分にも責任があると思ってますので、喜んで罪を償う覚悟でいます。」

全てを償い、ホストという仕事を手放す覚悟もある事を京香に伝える。

『どうして…?あの子が貴方の家を知ってるの⁉︎
翔魔は秘密主義だったじゃない。なぜ由亜が貴方の居場所を知ってるの⁉︎』

京香にとって由亜が逃げた事なんて、大した事ではなかったのだろか。自分の復讐を成し遂げるためだけに由亜を利用して、要らなくなったら捨てるつもりでいたのかもしれない。

それよりも未だ京香の関心は俺の事なのだと、少しの怖さを感じてゾッとする。

それと同時に軽んじて彼女を扱っていた事に、心底腹が立つ。込み上げて来る怒りを抑え、俺は京香に言い放つ。
「由亜は自分にとって唯一無二の存在です。今後、彼女に近付いたら容赦しませんから。そのつもりで。」

『翔魔、らしくないわ、そんなの……』

やっと京香に俺の思いが伝わったのか、分かりやすく動揺して声が揺れている。

「それでは。」
電話を切って通話にブロックをかける。
とりあえず、これで俺と京香との繋がりは断った。

もしも由亜にちょっかい出す事があるのならば、後は法的処置に出るまでだ。

その後、黒服に電話をして由亜が見つかった事を伝える。今後彼女の身辺の警護を頼む依頼をして、電話を切る。

少し疲れたなとソファに寝転ぶと、知らぬ間に意識を手放していた。