俺の住む高層マンションが見えて来る。
ハンドルを握る手が汗ばみ、心臓はあり得ないぐらいバクついている。
普段なら地下駐車に直行するが、マンション周りを一回りして、どこかに由亜の影がないかと目を凝らして探す。
エントランス前…残りわずかな希望を胸に、車寄せのロータリーで車を乗り捨てて走り出す。
来ていたスーツが邪魔になり近くのベンチに投げ捨てる。
冬だというのに汗ばんだシャツが不快に纏わりついてくる。そんな事を気にする余裕も無い俺は、ただひたすらに由亜を求めて走る。
5段の階段を3歩で駆け上がり、やっとエントランスが見えて来る。
暗がりの街頭の下に、しゃがみ込む人影を見つける…
「由亜…!!」
無我夢中で叫び、その影に向かって走り寄る。
おもむろに立ち上がったその影は、泣きそうな目を向けて、
「…翔さん…?」
と、小さく呟く。
「由亜…!!!」
その瞬間、なり振り構わずぎゅっと抱きしめた。
嗚呼…良かった…
小さく柔らかなその温もりを全身に感じて安堵する。
「…心配、おかけして…すいませんでした…。」
今にも消え失せそうな声で由亜がそう言う。
「良かった…会えてよかった…。
今日、会えなかったら…2度と、会えない…気がした。本当に、良かった…」
俺はといえば息も絶え絶えで、はぁはぁと肩で呼吸をしていた。
由亜が小さな手で、懸命に俺の背中を撫ぜてくれる。
ハッと我に帰ってパッと離れる。
「怪我はないか⁉︎今までどこに…⁉︎ここまでどうやって…?」
聞きたい事があり過ぎて言葉が溢れてくる。
薄暗い街灯では、由亜の姿がよく見えない。
不安に駆られ手探りで探す怪我よりも、何よりも…
冬だというのに、ロンTにカーディガンを羽織っただけの格好に驚く。
しかも…裸足⁉︎
慌てて抱き上げ、来た道を引き返す。
「寒空に…どのくらいこの格好でいたんだ?」
由亜の顔を近くで見ると唇が紫だ…寒さのせいかガタガタと震えている事が分かる。
「…ホテルのクローゼットみたいな所に、閉じ込められてて…トイレに行きたいと言って…隙を見て逃げて来たんです…。だから、着の身着のままで…」
震える唇で、それでも一生懸命話してくれる。
しかも、ポケットからハンカチを取り出して、俺の額の汗まで拭ってくれるから、
「俺の事は気にしなくていい。お前の方がボロボロなのに…。」
泣きたくなる程の切なさが込み上げる。
俺は投げ捨てたスーツを拾い、それで由亜を包み車へと急いで戻る。
「すいません…沢山、探させてしまいましたよね。」
由亜を助手席に乗せて急ぎ運転席に戻ると、そう言って来るから、
「そんな事はどうでもいい。会えたんだから全て吹き飛んだ。それよりも足の手当が先だ。」
車内灯では良く見えないが、裸足でここまで歩いて来たんだ。擦り傷に切り傷、場合によっては病院に行くべきかもしれない。
車を地下駐車に停め、由亜を抱え上げてエレベーターに飛び乗った。
ハンドルを握る手が汗ばみ、心臓はあり得ないぐらいバクついている。
普段なら地下駐車に直行するが、マンション周りを一回りして、どこかに由亜の影がないかと目を凝らして探す。
エントランス前…残りわずかな希望を胸に、車寄せのロータリーで車を乗り捨てて走り出す。
来ていたスーツが邪魔になり近くのベンチに投げ捨てる。
冬だというのに汗ばんだシャツが不快に纏わりついてくる。そんな事を気にする余裕も無い俺は、ただひたすらに由亜を求めて走る。
5段の階段を3歩で駆け上がり、やっとエントランスが見えて来る。
暗がりの街頭の下に、しゃがみ込む人影を見つける…
「由亜…!!」
無我夢中で叫び、その影に向かって走り寄る。
おもむろに立ち上がったその影は、泣きそうな目を向けて、
「…翔さん…?」
と、小さく呟く。
「由亜…!!!」
その瞬間、なり振り構わずぎゅっと抱きしめた。
嗚呼…良かった…
小さく柔らかなその温もりを全身に感じて安堵する。
「…心配、おかけして…すいませんでした…。」
今にも消え失せそうな声で由亜がそう言う。
「良かった…会えてよかった…。
今日、会えなかったら…2度と、会えない…気がした。本当に、良かった…」
俺はといえば息も絶え絶えで、はぁはぁと肩で呼吸をしていた。
由亜が小さな手で、懸命に俺の背中を撫ぜてくれる。
ハッと我に帰ってパッと離れる。
「怪我はないか⁉︎今までどこに…⁉︎ここまでどうやって…?」
聞きたい事があり過ぎて言葉が溢れてくる。
薄暗い街灯では、由亜の姿がよく見えない。
不安に駆られ手探りで探す怪我よりも、何よりも…
冬だというのに、ロンTにカーディガンを羽織っただけの格好に驚く。
しかも…裸足⁉︎
慌てて抱き上げ、来た道を引き返す。
「寒空に…どのくらいこの格好でいたんだ?」
由亜の顔を近くで見ると唇が紫だ…寒さのせいかガタガタと震えている事が分かる。
「…ホテルのクローゼットみたいな所に、閉じ込められてて…トイレに行きたいと言って…隙を見て逃げて来たんです…。だから、着の身着のままで…」
震える唇で、それでも一生懸命話してくれる。
しかも、ポケットからハンカチを取り出して、俺の額の汗まで拭ってくれるから、
「俺の事は気にしなくていい。お前の方がボロボロなのに…。」
泣きたくなる程の切なさが込み上げる。
俺は投げ捨てたスーツを拾い、それで由亜を包み車へと急いで戻る。
「すいません…沢山、探させてしまいましたよね。」
由亜を助手席に乗せて急ぎ運転席に戻ると、そう言って来るから、
「そんな事はどうでもいい。会えたんだから全て吹き飛んだ。それよりも足の手当が先だ。」
車内灯では良く見えないが、裸足でここまで歩いて来たんだ。擦り傷に切り傷、場合によっては病院に行くべきかもしれない。
車を地下駐車に停め、由亜を抱え上げてエレベーターに飛び乗った。