「そもそもモデルを始めたのも、街中でスカウトされた時、モデルをやれば色々なスタイリストに会えるって言われたからなんだ。だから、モデルはその為の布石かな」

私は淡々と教えられた彼の身の上話に、開いた口が塞がらない。


モデルなんてなりたくてもなれない人はごまんといるのに、それがスタイリストになるための土台だなんて……。

呆気にとられていると、いつの間にか信号は赤に変わり、何やら無言で私を見つめてくる海斗さん。

「あ、あの、顔に何かついてますか?」

何故急に見つめられているのか全く理解出来ず、どうすればいいのか狼狽えていると、突然海斗さんの口元が緩んだ。