「それにしても、さっきは参ったなあ。まさかあんなに大騒ぎになるとは思わなかったよ」

すると、海斗さんは被っていた帽子を脱ぐと、深いため息をはいて、門にもたれ掛かった。

「そんな有名人の方が素顔さらけ出しちゃ、大騒ぎにもなりますよ」

私は呆れながら冷静に突っ込むと、海斗さんは苦笑いを浮かべて前髪を掻き分ける。


「とりあえず帰ろうか。今日はたまたまこの近くに用があったから、ついでに加代ちゃんを迎えに来たんだよ。すぐそこに僕の車停めてあるから」


そして、手に持っていた帽子を被り直すと、寄り掛かっていた体を起こし、門の外へと歩き出した。