しかし、それを断ち切るようにバシンと豪快な音が廊下中に響き、付随して背中がヒリヒリと痛みだす。

相変わらず容赦ない恵梨香の平手打ちに、私は涙目になりながら痺れる背中をさすった。


「何贅沢言ってるの!イケメンと同居出来るなんて夢のような話じゃ……もがっ」

「だから恵梨香、声が大きいってばっ!」


更なる声量で騒ぐ恵梨香の口を、私は慌てて塞ぐ。


毎度同じパターンに、さっきから冷や汗が流れっぱなしだ。

「ごめん、つい癖で。それよりも、迷惑じゃなければ今度伯母さんの家にお邪魔させてよ。イケメンだかなんだか知らないけど、加代の同居人として相応しいかチェックしなきゃ」


突然何を言い出すのか、まるでお姑みたいな台詞に目が点になる。

本当に恵梨香の突拍子もない言動にはいつも驚かされるけど、そこから感じられる愛情に、私はやんわりと頬が緩んだ。