すると、突然背後から何かが勢いよくぶつかり、私は危うく倒れそうになるのを寸でのところで踏みとどまった。


まるで猪にでも追突されたような衝撃に、一体何が起きたのかとずれ落ちた眼鏡を直しながら後ろを振り返る。

瞬間、ふんわりと甘い薔薇の香りが鼻を掠め、気付くと私は恵梨香に両腕を掴まれていた。


「加代っ!探したんだからねっ!」

背後から腕を掴む恵梨香の眼光は、まるで獲物を捕らえた鷹のように鋭く光る。


どうしよう、恵梨香様とても怖いです。


硬直する私を他所に、鋭い目を今度は目の前にいるクラスメートに向ける恵梨香様。

「ちょっと、あんた用が済んだらさっさとこの場から消えてくれない?」

「は、はいっ!分かりました!」

超絶美少女恵梨香と視線が合ったクラスメートは勢い良く背筋を伸ばすと、酷い扱いをされているのにも関わらず。
赤面状態になりながら、言われた通り踵を返し、足早にその場を去っていく。