「あ~……えっと~……」

「山田ですけど」


どもる意味が瞬時に察知でき、私は即座に自分の名前を言う。


タイミング悪く話し掛けられたせいか、何となくドスの効いた声が出てしまったけど、特に気にしない。

それより、季節はもうすぐ五月に差し掛かると言うのに、未だクラスの名前を覚えないなんて失礼極まりない人だ。

……まあ、クラスに溶け込もうとしない私も悪いんだけど。



「あ、悪い。あのさ、この前配った文化祭のアンケートのことだけど、出してないの山田だけだから早く書けよ」


あんまり悪びれた様子を見せず、ポケットに片手を突っ込みながら、気だるそうに私を指差すクラスメート。


そういえば、うちの学校は文化祭シーズンが他校より早く六月に開催される。

なので、これから色々と準備が始まる時期なのは知っていたけど、引っ越しの件でそんなことはすっかりと頭から抜け落ちていて、言われるまで全く気付かなかった。

自分だけが提出していないという申し訳なさは感じているけど、上から目線で物言うクラスメートの態度に若干苛立ちを感じ、謝ることはせず私は無言で頷く。