「なんだ、お前も随分ゆっくりじゃねーかよ」

その時、寝ぼけ眼をこすりながら少し寝癖立つ学ラン姿の早川君が、続いて向かいの椅子に座ってきた。

うちの学校は男女共にブレザーの為、早川君の制服姿はとても新鮮に感じる。

おまけに、小麦色の肌と整った爽やかな顔立ちが学ランとよく合っていて、高鳴る胸に思わず視線を反らしてしまった。



「……えと、おはよう早川く……」

どぎまぎしながら、とりあえず朝の挨拶を交わそうとした矢先。
それを制するように、早川君は素早く右手を上げた。

「だから、俺のことは俊でいいって言っただろ。名字で呼ばれると他所他所しいんだよ」


寝起きだからなのか、少し不機嫌そうな早川君の言葉に私は無言で頷く。


それでは気をとりなおして。


「おはよう……えと……その……し、……俊……君」



ダメだっ!

只でさえ男の子の下の名前なんて呼び慣れていないのに、いきなり呼び捨ては幾らなんでもハードルが高すぎるっ!

しかも、私より一つ年上だしっ!


こうして自爆した私は耳までゆでダコ状態になり、思わず視線を下に向けてしまう。