つい先程まで夢と現実の間を行き来しながら微睡みの世界に浸っていた感覚が、一瞬にして冴える。
そして、停止していた思考回路が動き始め、今自分が置かれている状況をようやく認識することが出来た。
寝癖だらけの乱れた髪に、寝起きで剥れた顔。
今私は自分の中で一番不細工な姿を、超美形な人の前に晒している危機的状況に、布団を頭から思いっきり被る。
「お、おはようございますっ!」
とりあえず、どんなに取り乱しても挨拶を返すことだけは忘れず。
そんなあわてふためく私とは裏腹に、海斗さんはお腹を抱えてくすくす笑っていた。
「なかなか起きて来ないから起こしにきちゃったけど、時間大丈夫?」
心臓が激しく脈打つ中。
海斗さんの言葉に、ふと視線をベッド脇にある目覚まし時計に向けると、時刻は七時をゆうに過ぎていた。
同時にハンマーで頭を殴られたような衝撃に、血の気が一気に引いていく。
「お~い、加代ちゃん大丈夫?起きてる?」
しばらく石像のように動かない私を心配そうに覗き込むと、焦点が合わない視界に海斗さんの綺麗な顔が映り込み、再び現実へと引き戻された。
そして、今私は最大のピンチを迎える。