「……ん、……ちゃん」




意識が朦朧とする中、遠くの方から誰かの声がする。



「……よちゃん、……加代ちゃん」




その声は次第にはっきり聞こえ、ふわふわと浮かぶ夢心地な気分が、段々と地上に降り立つように意識が覚醒していく。


「……う……ん」

うっすらと重い瞼を開くと、ぼんやりとした視界に、とても綺麗な男の人の顔が映った。



……なんだ、まだ夢の中か。

男の人の夢なんて、珍しいなあ……。



そう思いながら、地上に降りかけた意識が再び宙に舞おうとした時だった。


「このまま寝てると、添い寝しちゃうよ」


聞き覚えのある吐息混じりの甘い声が、耳元を掠める。

同時に頭の中で除夜の鐘が大きく鳴り響いたような衝撃に、私は思いっきりベッドから飛び起きた。


「おはよう、加代ちゃん。よく眠れたみたいだね」

すると、その隣には私の様子をとても楽しそうに眺める海斗さんの姿があった。