「加代ちゃん、俊……」

伯母さん達に別れを告げた後、海斗さんは私と俊君の方へと向き直す。

「君達と過ごした日々は一生忘れないよ。今までの人生の中で一番楽しかったかも」

普段から見慣れていたこの優しい笑顔も、今日で見納めかと思うと、私の涙腺は再び崩壊してしまった。


「しんみりするような事、言ってんじゃねーよ。今生の別れじゃあるまいし、またいつでも会えるだろ」

寂しさを隠そうとしているのか。
俊君は頭を乱暴に掻きながら、視線を逸らしてぶっきらぼうに言い放つ。

「海斗さん。フランスでも頑張って下さい。私、ずっと応援してます。立派なスタイリストになれるように、いつまでも祈ってますから……」

私は私で、最後まで笑って見送ろうとしていた決意は呆気なく崩れ落ち。

嗚咽混じりにエールを送ると、海斗さんはくすくすと小さく笑って、私の頭を優しく撫でてくれた。


「俊。僕がいない間、加代ちゃんのこと頼んだよ」

そして、俊君の方を一瞥すると、念押しするように強めの口調でそう告げる。

「任せろ。あの幼馴染にまた泣かされたら、俺が海斗の分までボコるから」

俊君は海斗さんの意図を汲んだように、目を光らせながら、にかっと笑い親指を立てた。


そんな過保護な二人のやり取りに、今度は恥ずかしい気持ちが込み上がってきて、私は身を縮こまらせてしまう。