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それから時間はあっという間に過ぎ去り、いつの間にやら日が落ちていた頃、私達は駅で別れた。


今日は一日中一緒だったのに、まだまだ物足りなさを感じてしまい、ゆう君の後ろ姿を見ていると少しだけ寂しく思えてくる。

また学校で会えるのに、止めどなく溢れる「会いたい」という欲求は、一体いつになれば満たされるのだろうと。


そんなことをぼんやり考えながら、駅の改札を出ようとした時だった。


ショルダーバックの中で突然震え出すスマホ。

私は慌ててそれを取り出し、すぐに通話ボタンを押した。

「もしもし恵梨香?デート終わったの!?」

ゆう君と別れた時、いつでも連絡をして欲しいとメッセージを送った矢先に掛かってきた恵梨香からの電話。

私は逸る気持ちを抑える為、軽く深呼吸をしてから今日の成果を恐る恐る尋ねた。


しかし、いくら待っても返答はなく、妙な沈黙が流れる。

「……とりあえずね。伝えたい事は全部話したよ」

それから、ようやく喋り始めた恵梨香の声は何処か影かかっていて、なんだか嫌な予感がする。

「それはよかったね。……それで、返事は?」

抑えてはいたけど、やっぱりその先が気になってしまい。

無粋だと思いながらも、つい催促をしてしまう。


「それがね……ダメだった」

恵梨香の口調を聞いた限りだと、薄々そんな気はした。

けど、本人の口から聞くまでは望みは捨てないようにしていたけど、予想通りの結果となってしまい思わず肩がガクリと下がる。


「海斗さん、まだ恋人は作りたくないんだって。今はスタイリストの勉強に集中したいみたい」


……確かに。

現在フランスに向けて、講義をびっしり受けている海斗さん。

それに加えてモデルの仕事もあり、たまに家に帰ってこないこともしばしば。

だから、そんな状態で恋人を作ってしまったら、また楓さんの二の舞になってしまうことを恐れているのかもしれない。