「それでは、加代の恋がめでたく実ったところで、乾杯ー!」

オレンジジュースの入ったグラスを意気揚々と掲げると、私と恵梨香は互いのグラスを軽くぶつけた。


ここは、学校近くのファミレス。

平日の夕刻前とあって人気が少なく、店内はがらんとしている。

そんな中で、私と恵梨香は向かい合い、ジュースで祝杯をあげた。


「なんかゴメンね。部活までサボって私に付き合ってくれて」

私は半分まで飲んだグラスをテーブルに置くと、申し訳なさそうに恵梨香の顔を除く。

「なに水臭いこと言ってんの。こんな時に部活なんかやってられないから!」

そう断言すると、恵梨香は早速テーブル一杯にメニュー表を広げ、備え付けのタッチパネルであれこれ注文し始めた。



あれから、私は恵梨香にゆう君と付き合うことを報告した途端。

早速次の日に祝賀会の予定を組まれ、私達は授業が終わって早々に近くのファミレスへと向かった。

相変わらず彼女の威勢の良さには驚かされるけど、こうして心から祝ってくれることが嬉しくて。

伯母さんにお小遣いを貰ったし、今日は私も思う存分楽しもうと意気込む。


「それにしても、ここまでの道のりは本当に長かったわー。でも、これで岡田は加代の彼氏になったんだし、加代も堂々としなよ?」

すると、唐突に投げられた、言われ慣れない単語を耳にした瞬間、全身が湯気立つ程熱くなり、思わず俯いてしまう。


「か、彼氏……ですか……」 


ゆう君が私の彼氏。

これまで色恋沙汰には全く無縁の生活を送ってきたので、“彼氏”という言葉が妙に重々しく、とても気恥ずかしい。

しかも、学校一モテるゆう君が彼氏だなんて、私には荷が重過ぎる。

これまで全力で突っ走ってきたくせに、今更何を言っているのかと自分で突っ込みを入れつつも、いざゆう君の彼女になってみると何だか恐れ多い。