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__放課後。



人気のない旧校舎の裏側。


紺野さんとゆう君が向かい合って立つ横に、私はいる。

彼女をここへ連れ出してから、一体どれくらいの時間が経っただろうか。

一向に口を開こうとしない二人は視線を逸らしたまま、重たい沈黙がひたすら流れ続ける。



昼休みにゆう君と別れる直前、彼は紺野さんにけじめをつけたいと言った。

例え彼女を傷付けたとしても、気持ちが固まった以上はしっかり伝えなくてはいけないと。

そんな彼の決断を私も見届けた方がいい気がして、今私達はここにいる。 
 
だから、二人が話し始めるまでは口を挟まないと決めたものの、なかなか切り出さない様子にそろそろ限界を感じてくる。


すると、ゆう君は小さく息を吐くと、拳を強く握り締めて、前を向いた。


「麻衣、俺はお前に謝らなければいけない事がある」

その言葉に紺野さんもようやく正面に視線を向け、ゆう君を見つめ返す。

「お前の気持ちを今まで蔑ろにして悪かった。もっと真剣に麻衣の事考えてやれなくて、本当に申し訳ないと思っている」

それから、深く頭を下げてきたゆう君に対して、紺野さんは激しく動揺し始めた。

「や、やめて。お願いたがらそんなこと言わないで……」

まるで、その先の言葉を遮るように。

段々と怯えたような顔付きへと変わる紺野さんは、再びゆう君から視線を逸らしてしまった。

「嫌。これまで側にいた麻衣だからこそ、はっきりと伝えたいんだ」

けど、ゆう君は構うことなく、真っ直ぐと紺野さんを見据える。

「俺は加代が好きだ。だから、麻衣の気持ちに応えることは出来ない」

そして、力強くそう断言した途端、紺野さんの体が小さく震えたのを私は見逃さなかった。