「まさか、あいつが付けたのか?」

私の腕を掴んだまま、真剣な眼差しで問い詰められ、図星を突かれた私は益々言葉に詰まる。

「ゆう君には関係ないことだからっ!」

この場をどう切り抜けようか色々考えてみたけど、良い案が浮かんでくるはずもなく。

私はやけになって無理矢理突っぱねてしまった。


ようやく、普段の私達に戻れたと思ったのに、再び気不味い空気となってしまい、意気消沈してくる。

けど、ここはもう押し切るしかないと。

私は顔を背けて、腕を掴むゆう君の手を振り払おうとした次の瞬間だ。


「きゃっ!」

今度は腕を思いっきり引っ張られ、バランスを崩した私は、ゆう君の胸板に倒れ込んでしまった。

その直後、そのまま包み込むように抱きしめられ、一瞬思考回路が停止する。


「ゆ、ゆう君!?」

ようやく頭が回り始め、慌てて顔を上げると、苦しそうな表情でこちらを見つめるゆう君と視線がかち合った。

まるで何かを必死に訴えるような、熱のこもった眼差しと、包み込む彼の体温と相まって、私の体は今にも溶けそうだ。

「……やっぱり、ダメだ。あいつには渡せない」

すると、小声できっぱりと断言してくるゆう君。

「俺は、お前と真摯に向き合える自信がなかった。加代を選んだことで、再び麻衣が堕ちてしまう事が怖かったから。……だから、こんな情けない俺は加代を好きになる資格なんてない」

そして、悔やむように震えた声で訴えてくる彼の言葉が、心の奥底にまで響いてくる。


「でも、お前を一心に強く想っているあいつなら、加代の側にいることが相応しいと思った。……けど、ダメだ。加代があいつのものになるなんて、やっぱり耐えられない」

それから、揺らいでいた瞳に力が宿った時、彼から迷いが消えた。