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__月曜日。




午前の授業が終わり、私は高鳴る鼓動を抑えて、一組の教室へと足を運ぶ。

昇降口を挟んだ前半クラス側の通路は初めて踏み入る為、造りは全く一緒なのに、何だか空気が違うような気がして、先程から緊張しっぱなしだ。


そうこうしていると、あっという間にゆう君がいる教室の前へと到着し、私は気持ちを落ち着かせようと大きく深呼吸をする。

それから、締め切られている扉に手を伸ばし、恐る恐る開いて中を覗くと、残念ながらそこにゆう君の姿は見当たらなかった。


まだ昼休みは始まったばっかりなのに、もしかしたら今日はお休みなのだろうか。

せっかく気合いを入れてここまで来たのに、空振りとなってしまった状況に、私はがっくりと肩を落として、静かに扉を閉める。


「「……あ」」

その時、丁度教室に入ろうとしていた紺野さんとばったり蜂会い、不意をつかれた私はその場で硬直してしまった。


「もしかして、佑樹を探してるの?」

てっきり、いつものように睨まれるかと思いきや。意外にも穏やかな口調で話しかけてくれた紺野さん。

とりあえず私は黙って首を縦に振ると、何やら浮かない表情で紺野さんは小さく息を吐いた。

「さっき屋上に行くって言ってたから……」

しかも、何故かとても寂しげな目をこちらに向けてきて、何だか様子がおかしい。

「最近ずっと元気ないの。今日なんて特にそう。……もしかして、佑樹と何かあった?」

そして、核心をつかれ、私は言葉に詰まってしまった。

「ま、まあ……ちょっと。ゆう君と口論になったかな」

流石に告白しましたとは言えず。

私は視線を泳がせながら、ざっくり説明すると、紺野さんは少しだけ考え込んだ後、憂げに微笑んだ。

「それなら、会いに行ってあげて。そうすれば、少しは元気になるかもしれないから」


すると、まさか彼女からそんな言葉が出るとは思いもよらず。

私は暫く呆気にとられていると、紺野さんは特段気にすることなく、そのまま脇を通り過ぎて教室の中へと入ってしまった。