「……それにしても、本当に大丈夫なのか?」


それから、私達は肩を並べてベットに腰掛けると、俊君は心配そうな表情で私の顔を覗き込んできた。

「うん。こうなるのは覚悟の上だったから。でも、正直なところ、どうすればいいか分からないかな……」

力強く頷いたものの、路頭に迷っている状況は変わらないため、私は苦笑いを見せる。


すると、俊君は急にしかめっ面になると、呆れたように大きな溜息を吐いた。

「全く。あいつは何をそんなに意固地になってんるんだが。……本当なら、このまま無理矢理奪ってやりたいけど、加代を苦しめる事は絶対にしたくないしな」

そして、真っ直ぐな眼差しを向けられ、不覚にもときめいてしまう。

本当に、ゆう君のことを完全に諦めていたら、おそらく私は俊君に堕ちていただろうと。

そんな邪念がふと頭を過ぎってしまい、それを無理矢理振り払う。


「私なら大丈夫。これでも少しは強くなったんだから」

何はともあれ、こうしてまた笑えるのも俊君のお陰であって。 

私は感謝の気持ちを込めながら、胸を張って答えた。


「そうだな」

そんな私に俊君は柔らかく微笑んで、優しく頭を撫でてくれる。 


それが、とても嬉しくて。

これでようやく、普段通りの私達に戻れた気がして。

蟠りが解けていく喜びに、自然と笑顔が溢れた。



「……あ」

すると、何かに気付いた俊君は、突然手の動きを止めて私の首を凝視する。

「やべ……やっちまったわ」

そして、何故か顔を引き攣らせる様子に、私は首を傾げた。

「お前の首にめっちゃ跡付けた。海斗にバレたら間違いなく殺されるな」

そう言うと、俊君はバツが悪そうに視線を逸らす。


跡って、何のことだろう?

私は俊君の言っている意味が全く理解できなくて、きょとんとした目を向けた。

そんな私の反応に、俊君は深い溜息を吐き、「後で鏡を見ろ」と。

一言そう告げてから、気まずそうに部屋を出ていってしまった。