「……うっ」
ゆう君と別れた後、私は涙を堪える事が出来ず、俊君には構うことなく自分の部屋へと駆け込んだ。
もう頭の中がぐちゃぐちゃで、どうすればいいのか分からなくて、床に座り込みベットに顔を伏せて声を殺して泣いた。
あの瞬間、心の何処かで相原さんと渡辺君のようなことを期待していた。
だけど、現実はそんなに甘くなく、やりきれない想いで押し潰されそうになり、ただ涙を流すことしか出来ない。
すると、突然部屋の扉が開く音が聞こえ、振り返らずとも誰か来たのか分かった。
「……加代」
ぼそりと呟く俊君の声。
けど、私は返事もせずに顔を突っ伏したまま気付かないふりをする。
今俊君の顔を見たらいけない気がして。
この弱った状態で彼の顔を見たら、それこそ流されてしまいそうで。
そんな愚かな自分に飲み込まれてしまうのが怖くなり、じっと耐えていると、今度は部屋の扉が閉まる音が聞こえた。
それから、直近で人の気配を感じた瞬間。
俊君は後ろから抱き締めてきて、私は驚きのあまり咄嗟に顔を上げる。
「あいつのことは忘れろ。あいつは、お前をただ傷付けるだけだ」
動揺する私とは裏腹に、俊君は落ち着いた口調で耳元で囁くと、より一層力を込めて私を抱き締めてくる俊君。
その言葉が空虚な心の隙に入り込み、いけないと自制してても、つい意識が向いてしまう。