しかし、いくら待っても一向にその瞬間は訪れず。


それどころか、急に彼の熱が遠のき、予想外の展開に私は目を見開く。


「……悪い。今の、忘れてくれ」

そう言うと、ゆう君はこれまでずっとこちらに向けていた視線を逸らし、明後日の方向に顔を背けてしまった。



……え?


なんで?


だって、今私にキスをしようとしていたのに。


いきなり忘れろだなんて、意味が分からない。


他にも質問したいことは山程ある。
でも、それだとキリがないから、唯一これだけは絶対に聞きたい。


「ねえ、教えてゆう君。私の事、どう思っているの?」


段々悲しくなってきて、私は涙が零れそうになるのを何とか堪えながら、ゆっくりと問い掛けた。


それから、暫く静寂な時間流れる。

お互い一言も発することなく、刻々と過ぎる中、ゆう君はようやくこちらに視線を向けたあと、小さく溜息を吐いた。


「俺もお前が好きだ。……けど、悪い。加代と幼馴染以上の関係になることは、今の俺には出来ない」


きっぱりとそう断言するゆう君。

迷いのない言い方に、これが彼の本音なんだというのはよく分かった。


けど。

私には、その意味がよく理解出来ない。


「それって、私を恋愛対象として見れないってこと?」

分からないから、もう一度真意を問いただしてみる。

すると、ゆう君はそれ以上口を開くことなく、再び押し黙ってしまった。