すると、今まで全く微動だにしなかったゆう君の瞳が揺れ始めた。

まるで何かを訴えるように、熱い視線が返ってくる。


「……加代……」


そして、想いを込めるようにポツリと名前を呼ぶと、一歩一歩私との距離を詰めてきた。


それが何を意味するのか。


言葉にしなくても、その眼差しで伝わってくる気がする。


ゆう君の気持ちが。


思い込みなのかもしれないけど、でも、あながち間違いではないような。


そんな確信を抱きながら、私もゆう君の綺麗な瞳に吸い寄せられて、視線を逸らすことなくその場で立ち尽くす。


息遣いを感じる程の距離で立ち止まったゆう君。


相変わらず一言も発することなく、私を見つめたままゆう君の手が頬にそっと添えられる。

そこから感じる手の温もりが、身体中に染み渡っていき、心が満たされていく。


……なんて幸せなんだろう。


あの時の相原さんも、きっとこんな気持ちだったのだろうか。


頭がふわふわして、ゆう君のことしか見えなくなって、愛情が止めどなく零れていって。


もう、好きにして欲しいと。


心の中でそう呟いた途端、ゆう君の顔がゆっくりと降りてきた。


お互いの唇が触れるまで後数センチ。


次第に彼の息遣いが唇にまで伝わり、夢のような瞬間を噛み締めて、私はそっと瞳を閉じる。