そして、玄関扉の前に立ち、最後にもう一回息をはいてドアノブに手をかける。
「ゆう君、来てくれてありがとう。道分かった?」
「ああ。そんな複雑なルートじゃなかったし。てか、お前の今の家でかくて目立つから遠目でもすぐ分かったよ」
それから、笑顔で彼を出迎えると、ゆう君も普段通り柔らかい表情で微笑んでくれた。
よかった、私達普通に会話出来てる。
まず、それが何よりも一番懸念していたことなので、その不安が解消されたことに、私はほっと胸を撫で下ろす。
「研修お疲れ。元気そうで良かったよ。これ、白石から」
そう言うと、ゆう君は手に持っていた淡いピンク色のビニール袋を私の前に差し出してきた。
「ありがとう。暫く授業出てなかったから、届けてくれて助かった」
私はビニール袋を受け取って中を見ると、ノート以外にもお菓子が沢山入っていて、改めて彼女の優しさが身に染みてくる。
「……あのさ。あの時は悪かった。加代に酷いこと言って」
すると、急に真顔になったゆう君は唐突に謝ってきて、先手を打たれた私は面食らってしまう。
「直接謝りたかったんだ。でも、お前全然学校に来ないから。そしたら、丁度白石に会って、今日加代の所に行くって話してたから、丁度いいと思って」
私から視線を外し、気まずそうに話すゆう君。
そんな彼の本心が聞けて、後からじわりじわりと感動が込上がってくる。
「私の方こそ、ごめんね。勝手な事言っちゃって」
ゆう君も私と同じ気持ちであったことが凄く嬉しくて。
これでようやく彼に謝ることが出来、安堵する心に私は自然と笑顔が零れた。