家に帰るまでの道中、私は物思いにふけながら、ぼんやりと空を眺める。
改めて振り返ると、何だかんだこの二日間はとても充実していたと思う。
研修自体は殆ど意味をなさなかったけど、それ以外で相原さんという友達も出来て、自分の気持ちも整理する事が出来て。
研修前と研修後で私の心境はがらりと変わり、何処か吹っ切れた気がする。
そして、家に帰ったら、私は俊君にけじめをつける。
自分の気持ちを上手く伝えられるか不安ではあるけど、きっと俊君なら分かってくれる。
そう確信した私は、徐々に高鳴っていく鼓動を落ち着かせようと、小さく深呼吸をした。
すると、突然鞄の中にしまっていたスマホの着信音が鳴り出し、私は慌ててそれを取り出して画面を見る。
てっきり伯母さんからかと思いきや。
予想に反して恵梨香の名前が表示されていて、何気なく通話ボタンを押す。
「あ、加代。いま大丈夫?てか、体はもう平気なの?」
数日ぶりの恵梨香の声。
研修前に学校を休んでいたので、暫く彼女と顔を合わせておらず、久しぶりに声を聞くと何だかホッとする。
「うん。いま研修終わってその帰り。体調はもう完全に回復したよ!」
そして、話したいことは山程あるけど、とりあえず、今は余計な心配をさせないよう元気アピールをした。
「良かった。研修のことはまた後で話聞かせてー。それで、加代が休んでいる間ノートとったんだけど、これから岡田がそっち届けに行くから受け取っといてー」
「………………はい?」
いや。
恵梨香様。
今あなた物凄いことを、さらりと言ってのけましたけど?
私はよく意味が理解できず、返答することも忘れてその場で立ち止まる。
「たまたま岡田と廊下で会って加代のこと話したら、自分が行くって言い出したからさ。あ、今本人に変わるね」
「はい!?」
いやいや。
ちょっと、待って。
かなりの急展開過ぎて、状況について行けないんですが!?
そう反論しようとした矢先。
受話器の向こうでゆう君と恵梨香の話声が聞こえ、緊張が一気に最骨頂まで達した私は、心臓が今にも飛び出しそうなくらい暴れ回る。
「あ、加代。俺だけど」
「は、はい!」
それから、心の準備が出来ないまま、突然ゆう君が出てきて、動揺のあまり思わず声が裏返ってしまった。
「急に悪い。そういうことだから、今からそっち行っていいか?」
「はい」
そして、端的に要件を述べられ、私はまたもや二つ返事で首を縦に振る。
「じゃあ、後でな」
それから、通話はそこでプツリと途切れ、私は未だスマホを耳に当てたまま、その場で立ち尽くしてしまった。